TARKY TOSHIMA

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あることないことをいわないことにしなくなることもなくなる日(2009)

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Ouverture

イナイイナイ病という病気が世界にひろまったのは何時からだっただろう‥‥。それはだれにもわからなかった。もうその事を知っている人間はイナイイナイ病にかかって、この世からいなくなってしまったのだ。ついさっきまで話していた人間が忽然といなくなる、そんな現象が相次いで起きたのは何時からだったのだろう。それはだれにもわからなかった。もうその事を知っている人間はイナイイナイ病にかかって、この世からいなくなってしまった。

「松下君きみね、もう少し考えて予定を組まないと、相手の事情っていうのもあるんだよ、だから今回みたいなことをまたしでかしたら君にも考えてもらわないといけなくなるよ、君、聞いているのか?」

と言って部長が松下君を振り返ったとき、松下君はいなくなってしまっていた。

松下君はイナイイナイ病にかかっていたのだ。だがその事を知っている人間はイナイイナイ病にかかって、この世からいなくなってしまった。

「松下君!?」

と突然のことに驚いた部長を社員達がいっせいに見たが、その時部長はいなくなっていた。部長もまたイナイイナイ病にかかっていたのだ。だがその事を知っている人間はイナイイナイ病にかかって、この世からいなくなってしまった。そういえばあの社員達は何時いなくなったのだろう。それはだれにもわからなかった。もうその事を知っている人間はイナイイナイ病にかかって、この世からいなくなってしまったのだ。

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今日はお祭りだ。僕は家族と一緒に(父と母と、それに僕より年下であるが故に「弟」と呼ばれている何ものか)町内会の人間どもで賑わう神社まで行った。

「いらっしゃい」

ごちゃごちゃした屋台が並ぶ中、様々な出店を僕と家族は見ていった。突然弟が「あれやりたいあれやりたい」と主張しはじめたのだった。弟はある店を指差していた。

「びっくりするもの叩き」とその出店の看板には書いてあった。

何故か戦隊物のお面を被ったその店の男が、「びっくりするものを叩けますよ」と言った。父は「なんかよくわからないんだが‥‥」とあまりやりたがらなかった。弟はそれでも「これやりたいこれやりたい」と駄々をこねていた。

「しょうがないな‥‥じゃあ一回だけだぞ」と父は言った。弟は喜んだ。

「はいじゃあびっくりするもの出しますからそれを叩いてください」

男は屈んで大きな穴が開いた四角い箱をとりだしてきた。

「それじゃあゲームスタート!」

しばらくの間をおいて、穴から父がでてきた。首から上を外に出している。

「おとうさーん!」

父は唖然とした表情を浮かべていた。「あれ?いつのまにこんな‥‥」と呟いた。

「はいびっくりしたでしょ?じゃあ叩いて」

と男は言った。

「叩けない‥‥僕叩けないよ!」

と弟は震える声で言った。

「え?それじゃゲーム終わらないよコレ。お父さんいつまでも箱の中だよ?」

と男はぶっきらぼうに言った。

「お父さんこんな姿で出勤しなきゃいけないんだよ?」

迷っている弟からハンマーをとりあげ、僕は思いっきり父を叩いた。

「ヘゲモニー(支配権)!」

と言って父は地面にめり込んだ。

「お~、いい叩きっぷりだね。はい25点」

と男は言った。

「はいじゃあ賞品の駄菓子4個あげます。家族4人で仲良く分け合ってください」

僕はそれを受け取った。

そうして僕たち家族はそれぞれ渡された駄菓子を食べながら賑わう神社を後にしたのだった。

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穴神様は、穴である。

ここ穴神村の住人たちは、村はずれの、山道の脇にある洞穴の、さらに奥の地面にぽこっと開いた小さな穴を、「穴神様」といって畏れ、敬っている。

ここの村人たちは皆体のどこかに一箇所だけ穴が開いている。穴神村で15歳を迎えたものは、通過儀礼として体の一部に穴をあけなければならないのだ。

村長は頬に穴が開いていた。彼の声は口から、というよりもその穴から聞こえてくるのだった。

「貴方に今日来て頂いたのは、他でもない、我々の神である穴神様に異変が起きているからなのです‥‥」

村長は、私に(頬に開いた穴から)そう言った。

「穴神様を見てください‥‥」

そう言って村長は穴を指差した。

「穴神様の穴が小さくなっているのです!」

村長は「これが昨日の穴神様です」と言って私に写真を見せた。言われてみれば穴の大きさがひとまわり小さくなっているような気もする。

そして「私の穴の写真を見てください。」村長は自分の穴を撮影した写真を見せてきた。

「私の穴は、日々大きくなっているのです!」

「なるほど。これはただならぬ事態ですね。‥‥それで私に原因を調べ解決してほしいということですか」

と私は答えた。

「そのとおりです、どうかお願いいたします」

村長はそう言って頭を下げた。

私はひとまず研究室に戻り、あらゆる資料を精査したが何の手がかりも得られなかった。また村に戻り、そこでも調査したが結果は同じだった。そうこうしているうちに村人たちにあいた穴は大きくなり、穴神様は小さくなっていった。

私は穴神様(もはや直径3cmほどの穴でしかなかった)に「あなたは一体なぜこのようなことをするのですか?」とたずねた。だが自分の声だけがむなしく反響するだけだった。私は穴に石を投げた。耳を澄ませても穴の底に落ちた音は返ってこなかった。

「わからない‥‥なぜなのだ」

村長はすでに穴に体を侵食され、のこるのは足の親指だけになってしまっていた。

「もうしわけない、結局穴神様を元に戻す方法がわかりませんでした」と私は言った。

足の親指以外穴化した村長は、「そうですか。だが、穴になるというのも意外と悪い気分ではないと最近思うようになってきたのです」と答えた。

とうとう、村人たちはみな穴になった。しかし私は-手遅れだったとはいえ-穴になった住

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民の民家から古い文献を発見したのだった。簡略化して述べると、そこに記されていたのは、「かつて穴神様は一人の人間で、次第に穴が広がっていき、今のような状態になった」という内容のものだった。だから、私はこうも思うのだ。あの穴神様がかつて人間だったのならば、今は一人の人間となってどこかで生活しているのではないか、と。そして再び彼が穴になると、住人たちは人間にもどっていくのではないか、と。

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ドーナツの穴じゃない部分って、本当においしいよな。そう言ったのはまだ鬼畜になっていない頃の貴方でした、私は私で、今はまだ人間じゃなくなった貴方の面影をきらきら追い求め、色々な蓋を開けたり、閉めたりを繰り返す毎日です。貴方がいないかしら、そう思って開けたり閉めたりを繰り返します。そういえばもうすぐ秋じゃなくなりますが、如何お過ごし?少しも僕にはドーナツをくれなかったから君が悪いのだよ。胃がもたれたのも、君が恐怖したのも、気持ち悪いのも、少しも僕にはドーナツをくれなかったから。ドーナツ-穴=ドーナツになるかどうか、考えてごらん。きみはそういったことが得意だっただろう。あるいは、僕-鬼畜=僕の面影になるかどうか、考えてみてもいいだろう。君はそう考えているから蓋を開けたり閉めたりして僕を探そうとしているのか。それなら僕はいつか見つかってしまうかもしれない。君には穴の部分だけをあげよう、僕はそれ以外の部分を食べる。何故か君は餓死してしまったが、まあいいか。

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マイナス世界の人間たちが、「プラス世界にマイナスドライバーがあることが許せない。」と言ってプラス世界に戦いを挑んできたのは去年のことだった。

「我々はマイナスマイナスドライバーしか認めない」

そう宣言したのはマイナス世界の代表である-バラク・オバマだった。彼は-核兵器廃絶を-国際連合に提出したばかりだ。

最初、マイナス世界は一部の代表者たちを通してプラス世界に圧力をかけていた。だが、プラス世界はマイナスドライバーの必要性を訴え、マイナス世界の住人たちの要求を跳ね除け続けたのだった。そんなプラス世界に業を煮やしたマイナス世界は、とうとうマイナス世界とプラス世界を連結する装置を開発したのだった。これは-ホーキング博士(彼は非常に頑健な肉体をもっていて、「車椅子反対委員会」の代表でもあった)が発明したという。

「これでプラス世界に武力行使することができる。我々は宣言する、プラス世界に囚われている人質たるマイナスドライバーの解放を!」

-バラク・オバマは真っ白な顔にあいた口から、真っ黒い歯を覗かせて言った。

しかし彼らは気がついていなかった。プラスとマイナスが一緒になると0になるということに。プラス世界とマイナス世界が連結したときそれは起こり、+バラク・オバマは-バラク・オバマと一体化しその直後、光に包まれ消えた。このようにして次々と世界の全てが0になっていったという。こうしてこの+-世界にはマイナスドライバーだけが残ったのだった。

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否定刑事(デカ)西郷亜門は、否定によって推理することで有名だ。彼は、ある雪国のペンションに休暇という口実により宿泊していた。実のところ、彼はそこのオーナーであり彼の大学時代からの友人でもあった黒崎昭(38)から手紙を受け取っていたのだった。

頬の右側に大きな黒子をもったオーナーは彼を歓迎してから、呟くように言った。

「君に今日来てもらったのは、他でもない、私のところに前から来ている脅迫状のことで相談があるのだよ‥‥」

その脅迫状にはこう記されていた。

「3月24日、お前はいなくなることもないこともなくなるだろう」

この脅迫状に記された日付はほかでもない明日であったが、「これは脅迫状じゃない!」と西郷は叫んだのだった。

「どういうことだい?」とオーナーは聞いた。

彼は何も答えず、自分の部屋に帰っていった。

同じ宿泊客には学生の高幡富士夫(21)、同じ会社に勤めているOLの二人組み-土田洋子(25)と栗原晶子(24)、そしてもう一人頭を白いフードですっぽりと包んだ男-浜岡洋一郎(38)がいた。

翌日朝になり宿泊客たちは小さな食堂に降りてきたが、そこに朝食はなかった。不審に思った西郷はオーナーの部屋をノックしたが返事はない。彼はドアをこじ開け、部屋の様子を伺った。オーナーの姿はなく、床には血だまりだけが残されていた。OL二人組みは卒倒した。高幡は「はやく警察に!」と叫んだ。

「せめてなにかの事故であってほしいわ」と青白い顔で土田洋子は呟いた。しかし否定刑事はこう断言した。

「これは事故じゃない!」

「ではやはりこれは事件なのですか?」浜岡がそう聞いた。しかし否定刑事はこう断言した。

「これは事件じゃない!」

「じゃあなんなんですか?」

と呆気にとられた高幡は言った。

彼は何も答えず、自分の部屋に帰っていった。

外は吹雪で脱出することはできない状況になってしまっていた。

翌朝、西郷は食堂に全員を呼び出した。そしてこう言った。

「犯人は‥‥この中にいない!」と。

その時ペンションのベルが鳴った。宿泊客皆でおそるおそる玄関に行き扉を開けると、頬の左側に大きな黒子をもった、オーナーにそっくりの男が立っていた。

「黒崎昭です」

と彼は言った。

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「それでは朝食を作らせていただきます」

「どういうことだ?何の冗談なんだ?」

と高幡は怒気を顕わにしてくってかかった。

「いったいなにがでございましょう」

とオーナーは言った。

「あなたは昨日からいなくなっていたじゃないか、部屋にも血のあとが残っていたのに」

「それでは朝食を作らせていただきます」

オーナーは彼を無視して食堂の奥の調理場にはいっていった。

「悪ふざけか?」

高幡は呟いた。

「そうじゃない、オーナーはいなくなることもないこともなくなったのだ」

と西郷は言った。

こうして否定刑事の否定による推理は当たったのだった。

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いないいない。いない子どもはどこにいますか?と叫んでみたりもする私はどこにいるのだろう、と自問してみた。ついつい名前を教えようとあの子に指さした瞬間、指を指すことによりその対象を消せる能力、「神の人刺し指(ゴッドスピードユー・ブラックエンペラー)」を発動させてしまった私は、あの子はどこにいってしまったのだろう。いない子どもはそこにいませんか?あそこにいませんか?と聞く羽目になった。「ここにいないですか?」「ここにはいないです」とのやり取りを何回もやる羽目になった私は、いない子どもがどこにいてどこにいないのか、段々わからなくなってきて、「いない子どもがいない場所はどこじゃないんですか?」とわけのわからない言葉を繰り返すのだった。

ある男に「いない子供はいないんですか?いなくないんですか?」と聞くと、「いない子どもの前にあなたは何者なんですか?」ときかれた。私ですか?私は‥‥とついつい名前を教えようと自分に指さした瞬間、指を指すことによりその対象を消せる能力、「神の人刺し指(ゴッドスピードユー・ブラックエンペラー)」を発動させてしまった私は、あの、私はどこにいってしまったのだろう。いない私はどこにいますか?と叫んでみたりもする私はどこにいるのだろう、と自問してみた。

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